第7回大会 Aブロック

準々決勝第1試合

奇跡のガルーダ・ミヤマっちグレート

VS

ボルネオのまだら狼・ワラストンツヤクワガタ

 

 HP開設時からトップページにあり、いまだ工事中のコンテンツ・「ミヤマっち 飛龍十番勝負」。

 公開はいったいいつになるのか。

 全く考えていないわけではない。

 

 このAブロックの決勝戦を、まだら狼・ワラストンと争う奇跡のガルーダ・ミヤマっちグレート。

「ミヤマっち 飛龍十番勝負」は彼の物語にしようと思う。

 

 彼は私にとって忘れがたい虫である。

 「むしさんすきすき」の第34話・「光る宇宙」でも書いているが、忘れようにも忘れられない愛しい虫である。

 

 彼は最近まで我が家の冷蔵庫で、タッパーの中に入って存在していた。

 死んだその日の姿のままで。

 妻に何度言われても離れがたかったのだ。

 

 この第7回大会をはじめ、第5〜第8回大会まで、彼は奇跡のような活躍を見せてくれた。

 「すごく弱い」はずのミヤマクワガタの実力と可能性を、外国産甲虫を倒すことで示してくれたのだ。

 そして、その実力がピークと思われた時期に、突然この世を去ってしまったのだ。

 本当に短い時間を、灼熱のように燃え上がり、強烈な印象を残して去っていった。

 「そろそろ寿命だな・・・。」という時期があれば、覚悟もできようものを、彼はなんの予感も感じさせることなく、一瞬の夢のように私の前から去っていってしまったのだ。

 

 止まり木の下で、埋もれるように死んでいた。

 私の狼狽となげきには妻も口あんぐり。「虫だから死ぬんだってば。」子供をさとすように慰められた私だった。

 「グレート!!グレートオオオオ!!」

 世間一般から見れば、その姿、大バカである。しかも「グレート」ときたもんだ・・・・・。バカおやじここに極まれり・・・・。

 しかし、叫ばずにはいられない。それほど私はグレートが好きだった。

 

 あれほど「心が通じ合う」ような気がする虫は他にはいない。人語を解するかのようなその行動。

 話をすると、聞いているかのようにこちらを向いてじっとしている。

 「うん、がんばっちゃうぜ、オレ。博士見ていてね!」みたいな・・・・・。

 

 そして奇跡を見せる。

 私は元々がミヤマクワガタの実力を疑っているので、「勝ってほしい」と思ってはいても、「勝てる」と思ってはいない。どう考えても勝てる要素は少ないのだ。ただ、「がんばれ!」と願うのみ。

 

 そのグレートの物語のクライマックスがこのワラストン戦だった。

 

 

 パワー、スピード、破壊力、好戦性、脚の力や装甲、そして体格。実績。攻撃力も防御力もワラストンが上である。

 なにひとつミヤマっちグレートが上回っているものはない。

 

 ワラストンがここまでに負けた試合は、第5回大会準決勝・破壊獣アトラスA戦、第6回大会2回戦・インターメディア戦のみ。

 連戦連勝、マンディブラリスに再起不能の精神的ショックを与え、ラコダールにスピードで対抗し完封、この時点での国産最強虫・カブ2号を一蹴、前回の準優勝者・ギラファをも簡単に粉砕している。

 自分より大型の、闘志溢れるパワーファイターにしか負けていないのだ。

 均太郎さんが「純粋なツヤとしては最強」と言ってくれたが、ズバリその通り、本当に強いのだ。

 

 ミヤマクワガタごときが勝てる可能性はゼロ。

 

                                                   まだら狼が牙を剥き、襲い掛かる!!

 私はグレートを手に乗せ、話しかける。

 「グレート、たのむぞ!お前の強さを見せてくれ!がんばれよ!」

 私を見つめるグレート。

 勝てはしないだろう。しかし、善戦はしてほしい。がんばれ、グレート!!オレはお前がすきなのだ。

 

 あとは多くを語る必要はないだろう。

 話の流れから言って、「ミヤマが勝ったのではないか」とみんな思っていると思う。

 画像を見てもらえば、その展開が分かるだろう。

 

 そうすることが当然のように、踊りかかるまだら狼。

 わっさわっさと躍動し、頭を振りたてながら前進する。

 

 その無表情で巨大なマスクはカンブリア紀の最強生物・アノマロカリス。

 アノマロカリスは、頭に付いた強い腕で獲物をホールドすると、奇怪なミキサーのような大アゴでバリバリと獲物を破壊し、胃袋に収めてしまう。

 

 ワラストンも同じだ。ワッサワッサとやってきて、ギチギチギチと挟む。

 それで終わりだ。

 

 絶大なパワーでグレートを押し込むまだら狼。

 自ら斜めにアゴを差し込み、グレートの破壊にかかる。

 その凶悪な第一内歯は、破壊力・切断力とも満点。

 

 うえ〜!!見ていられない!!

 ミヤマの装甲は薄い。特に胴体部の薄さは話にならないレベルだ。

 それと比べれば頭部は頑丈とも言えるが、ドルクスのような強靭さはない。

                                                   斜め差しでまともに破壊しあう両者。

 固いが、固いだけで、もろさが同居する。弾性がないのだ。

 ドルクスの装甲は、「硬い」という感じで、強靭さと弾性が両方ある。竹の幹のような強さだ。

 ミヤマの頭の装甲は、「固い」だけで、弾性に乏しく、強いことは強いが、限度を越えればもろい、瓦のような強さと言える。

 頼む!事故だけはおきないでくれ!!と願う。

 

 ミヤマの戦闘スタイルは主に「受け」だ。

 特にモー虫では、相手がアグレッシブな外国産甲虫であることが多く、余計そういう感じになる。

 ノコギリクワガタは「攻め」に強く、「受け」に非常に弱い。そのため、モー虫では戦績が悪い。

 それに対し、ミヤマは「受け」に回ってからが強い。特に斜めに相手がアゴを差してきた時、その真の実力が目覚めるのだ。

 今、グレートはその得意の体勢になった。

 

 そして奇跡が起きる。

 ワラストンの猛攻!!まさに「猛攻」としか表現しようがないむしゃぶりつくような攻撃。

 頭を前後左右に揺さぶりながら、削るように、グリグリとねじ伏せにいく。

 耐えるグレート。がんばれグレート!!

 

 さらに猛攻。攻めて攻めて、攻めまくるまだら狼。

 反撃するグレート。

 凄まじい挟み合いが始まった・・・・・・。

 

 「強さ」とは一体なにか。甲虫においてそれはパワーであり、体格の大きさである。

 私は多くの戦いを見るうち、そう確信しつつあった。

 テクニックもスピードも、残忍性も、種としての強さも、二次的な要素でしかない。

 そう確信しつつあった。

 

 

 しかし、ここで私は「そうではない」奇跡の戦いを見るのだ。

 最強のツヤ・ワラストンを相手に、真っ向戦うグレート。その姿は、特別なオーラを発しているように見えた。

 

 「こんなことがあるのか!?これはもしかして勝つんじゃないか?」

 私の目はまん丸だったに違いない。

 

 目の前で、徐々に体勢を崩し始めたのはまだら狼の方だった。

 あのまだら狼が、はさみ負けているのだ!!

 まだら狼の身体は、くの字に曲がり、グレートの反撃にあえいでいる。

 

 

 信じられん・・・・・。

 まだら狼の巨体が、浮き上がっていく。

 明らかにグレートのパワーが勝っているのだ。

 

 ビキビキ・・・パキパキ・・・・・

 激しい音を立てながら、両雄は絞り上げるように挟みあう。

 長い時間、お互いの誇りをかけて。

 

 グレートよ、なぜお前は戦えるのだ。今、おまえは明らかにお前より強いワラストンを押しているのだ。

 今のおまえは、物理の法則を越えて強い。

 

 説明不能の強さでワラストンを浮き上がらせるグレート。

 

                                                   まだら狼を浮き上がらせるグレート。

 そして終末が訪れる。

 首が決まるような状態で身体を持ち上げられながらも、なんとか持ちこたえていたワラストンが、ついに撤退を開始する。

 

 勝った・・・・。

 これはいったいなんなんであろうか。

 なんで勝ってしまったのか。説明不能。

 身体が大きい方が勝つ。力が強い方が勝つ。そうではなかったのか。

 

 私を見上げるグレート。

 もう落ち着いている。

 「どう?博士。かっこよかった?」

 と聞いているように見える。

 

 私は褒めて褒めて褒めまくってやった。

 子供が運動会で一等賞を取ったなら、きっとこんな気分だろう。

 グレートも得意そうである。

 

 バカを承知で言えば、お前には心があるような気がする。

 トレーニングとはげましの日々が、喜び合った日々が、お前を強くしているのではないか。

 

 すべての数値で下回るであろう戦闘力ではなく、お前は心の力で勝ったのではないか。

                                                     撤退するワラストン。勝った!!

 

 ミヤマっちグレート、ついにベスト4進出。

 

 

 

 

 

準々決勝第三試合

(都合により第二試合より先にUP)

地獄の風車・つの三郎(短角アトラス2号)

VS

黒い断頭台・セレベスオオヒラタクワガタ

 

 ミドル級ブロック決勝戦。

 そこに勝ち残ったのは、つの三郎とセレちゃんだった。

 

 現在、モー虫は22回大会を終え、23回大会を迎えようとしている。

 当初の理念である国産カブトを基準としたミドル級最強決定戦・「もし同じ体格ならどれが強いか」といったテーマは反故になりつつある。

 コーカサス、ヘラクラス(小型だが)、ホーペイ、インターメディアが常時参戦し、二代目となるセアカ、ブケットも大型化、ミドル級とヘビー級の中間程度の体格・クルーザー級のアンタエウス、ローゼンベルグオウゴンオニ、タランドゥス、ケンタウルスも登場、しまいにはライト級ともストロー級ともいえるザバゲノコ、メリーメンガタも参戦した。

 旧友の康夫が送り込んできた刺客・アルキデス短歯もクルーザー級の体格、もはやセレちゃんやパラワンの力を持ってしても、ミドル級の体格では活躍することが難しいリングになってきた。

 

 ここで私はふと考える。

 これからのモー虫の進む道をだ。

 

 ますますの大型化を進め、全体の「強さ」のレベルを上げ、甲虫の本当の強さと迫力を追求するか。

 もしくは原点に返って、ミドル級中心にして、ヘビー級は別枠にするか。

 現在の状況は、なんの検証にもなっていないような気がする。

 「大きさ」という前提条件が全く違っているので、「どの種が強い」という証明にも、「どの種の形態・進化・戦闘スタイルが最も優れているか」という証明にもなっていないのだ。

 当初の私の真の狙いは、後者にあった。ほぼ同等の体格の虫を揃える事で、検証しようと考えた。

 

 「なんでもあり」な現在、その精神は失われつつある。

 ここで「ホーペイが強い」「インターが強い」「コーカサスが強い」と言っても、体格的に当たり前とも言える。

 世間的には評価が高くないが大きめの虫に、純粋ミドル級のヒラタが敗れる。「ヒラタよええ〜」という誤解を生じさせはしないか。

 

 

 私は、今年の夏、国産虫たちが帰ってくるとき、ミドル級GPという本来の形に戻そうと思う。

 大型の選手達は、基本的には別枠のトーナメントを戦い、時に企画やスペシャルマッチでミドル級選手との戦いを行なうという形式にしたいと思う。それではさみしい、という時は、その大会のテーマに合った2匹程度の大型選手を「特別参加」という形で選び、本戦に参加させる形を取ろうと思う。

 強いドルクス系は小さく、弱い虫はちょっと大きめにした、国産カブト虫を基準としたミドル級GPを行なう。

 それが私の役目だと思う。

 

 幸い、モー虫には均太郎さんと「ムシKINGオブザケージ」がある。

 その動画は量はもちろん、出場する虫のバリエーション・質、バトルの激しさとも、たぶん世界一。

 ノーホールズバード、制限なしでの真の「最強虫」を決める戦いがそこにある。

 

 ムシKINGオブザケージの素晴らしいところは数え上げればきりがないが、なによりも「真の最強」を決める条件がすべて揃っているところにある。出場虫は、基本的に大型の種類は大きく、小型の選手は小さいので、その「種としての強さ」がハンデなく見られるのだ。

 しかも、出場する虫の種類ときたら、これ以上は望めないレベルだ。

 総当りリーグ戦で王者とランカーを決め、ボクシングのようにランキング戦と防衛戦を行なう。

 間違いなく「最強」を掛け値なしで検証できる場である。

 (これが驚くべきことに無償の個人の仕事なのだ。)

 

 私が「どの種の形態・進化・戦闘スタイルが最も優れているか」を追求し、

 均太郎さんが「真の最強虫」を追求し、

 子供おやじ教授が「顎力計」で科学的データを打ち出し、ニュースター・ミンダナオ、大型コーカサスで「最強」を、我々と目の付け所が違うマニアックな選虫の「強さ」と性質を検証してくれる。

 もちろん、クワ万歳厨さん、クワガタさん、konaちゃん、キクさんや沖縄人さんもそれぞれの実践で助けてくれることだろう。

 

 おお、こうやって書くと、わしはなんて幸せなんじゃ。

 病が長引いて、ダークな気分じゃったが、なんか幸せになってきたな・・・。

 

 このバトルレポートの形式も改善したいと思うのだが、これは性分なのでなんともいえないかも・・・。

 現在はコラム「むしさんすきすき」なんだか、バトルレポートなんだか分かんない様な形式になっている。

 その虫の魅力を伝えたい、と思うあまりと、「語り部」としての性分が、どうでもいい話を長々と書く、という形式を生んでいる。

 それは別に「コラム」の方で存分に書けばいいのだが、それとは別にコラムまで書く余力がない。

 ついつい、本編がそうなってしまって、いざコラムとなると本編で書いてしまっているので、アルキデスやローゼンのコラムのような内容がないものになってしまうこともしばしば。

 前々回のつの三郎の話など、「むしさんすきすき」そのものだ。

 いずれ整理して、「むしさんすきすき」に入れるべき部分は移動したいと思う。

 本編は重要な試合以外は簡略化。それでいこう!

 

 もう一点、HPはもはや容量が一杯になった。

 今まで公開したもので、古いものを公開終了にしようかとも思ったが、これは面倒だし、なんかさみしい。

 もう一つ別館を建てようかな、と考えている。

 

 なんていいながら、簡略化どころか、コラム化・いや、随想化するばかりの今回の話。

 いや〜、いつもながらヒデ〜。みんなごめんね。

 

 

 さて、ここからがバトルレポートだ。いや〜長かったな〜。さらに新記録樹立。

 どの試合でも、自分の持てる技すべてを披露しないと気がすまない(相手は大迷惑)「人間風車」ビル・ロビンソンのような私。

 

 こっちは「地獄の風車」つの三郎。相手は「名勝負製造機」セレちゃん。

 当時最も私のご寵愛が薄かった者と、ご寵愛が深かった者の対決だ。

 

 ゴングが鳴る。

 

 「つの三郎よ、俺様は他の連中のようにはいかないぜ。」

  百戦錬磨のセレちゃんは、たたずまいが違う。

 

 新参者にデカイ顔はさせられない。

 短角アトラス1号のように、ギロチンバイスで地獄を見せてやる。

 

 

 アトラスオオカブト。

 これほど強い個体と弱い個体が違う虫もいないだろう。

 長歯型(大型個体)と短歯型(小型個体)で強さが全然違うのは、まあ、普通は 

当然だ。(ツヤとアルキは別)

 同じ大きさでも、気が弱い個体と、気が強い個体で強さに違いがあるのも、これ

また理解できる。

 

 しかし、アトラスは違う。

 ほとんどの個体が闘志にあふれ、好戦的である。

 しかし、個体によって全くその強さが違うような気がする。

                                                   地獄の風車の突進を受け止めるセレちゃんだが・・。

 私は最初に破壊獣・アトラスAを見たので、アトラスとはなんと強い虫かと感心した。

 ハムハウスを暇つぶしに粉砕し、最後まで勝負を捨てず、いつもではないが、ホーペイやインターメディア、ギラファに勝つ。

 

 もし最初にアトラスB(闘志はあり、普通の強さ)やミンダナオアトラス(つのジャギ・闘志はあるが弱い)を見ていたなら、「強い」とは思わなかった

ろう。

 短角アトラスもまた、ツノシロウ、初代1号のみしか知らなかったら「強い」という印象もなかったに違いない。

 

 

 今となっては、アトラスはそれほど強い虫ではない、と思う。

 しかし、中にはバカみたいに強い個体もいるのだ。

 私は破壊獣とつの三郎にそれを教えられた。

 

 

 地獄の風車の、恐怖のクロール、大車輪ロボコンパンチが火を噴く。

 モンガーモンガーと前進していく。

 カブ次郎も、アマミっちもこれで何もできずに流されていったのだ。

 

 しかし、セレちゃんは一味違う。

 つの三郎の非情の突進を受け止める。

 幾多の対戦相手を葬ってきた必殺のギロチンバイスが爆発!!

 

 初代短角アトラスとの対戦では、下からのギロチンバイスで、文字通りギロチン葬、あざやかに勝利したセレちゃんだ。

 さあ、見せてみろ!!名勝負製造機の力を!!

 

 しか〜し。

 つの三郎、ふたたび前進。

 

 モンガーモンガー・・・・。畑を耕す耕運機のように進んでいく。このよどみない前進が相手に戦術を選ぶ隙を与えない。

 ドルクスの対カブト戦略とすれば、当然斜め前方にポジションを取り、ピンポイントで頭を挟んでねじり上げる。これに尽きる。

 しかし、つの三郎は試合開始と同時にロボコニック・ストームで前進、百戦錬磨で試合巧者のセレちゃんにそのポジションを取らせない。

 ただまともに受け止めるしかないセレちゃんのギロチンバイスは、やや高め、つの三郎の胸角下に入ってしまう。

 

 そのポジションはつの三郎にとっては絶好の位置だ。

 セレちゃんの頭を下から突き上げながら、スチーム・ローラーで前進!!

 テクニシャンのセレちゃんは、なんとか局面を打開しようと何度も挟み直すが、その間も前進するつの三郎が圧力をかけ続けるので逆にどんど

ん体勢は厳しくなるばかり。

 

 なんと、そのままセレちゃんを場外葬。

 「ぎゃあああああああ!!セレベスが!!セレベスまでもが!!おのれつの三郎!!よくもやってくれたわね!!」

 あしゅら男爵状態の私。

 ミドル級GPはなんとつの三郎が優勝。ベスト4進出!!

 

 地獄の風車が止まらない。

 

 

 

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